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既存の物流センターを合理化・改善する場合の方法論と実施事例をご紹介します。
物流センターのコスト削減策についての見解はいろいろありますが、本稿では(公社)日本ロジスティクスシステム協会の「2019年度 物流コスト調査報告」における「物流コスト適正化策」の中から、物流センターに係る主要な事項について考察します(図表.1 ご参照)。
多くの物流センターは保管機能を持っていますが、取扱商品の入れ替わりや物流量の変動に対応するために、保管スペースの確保と効率化および入・出庫作業性の維持・向上に苦慮しています。
このスペースは主要な物流コストであり、積極的に改善する必要があります。具体的な方法としましては、
①物流特性の変化に対応して、レイアウトの定期的な見直し・改善を行います。
②出庫頻度・在庫量等のABC分析を行い、ストックロケ(保管場)とピッキングロケ(出庫場)の最適な区分を適時見直します。なお、C商品については、一般的に移動棚の活用が有効です。
③作業場等における上部空間の有効活用を検討します。特にマテリアルハンドリング(マテハン)設備を計画する場合は、上部空間への設置や立体自動倉庫の活用が有効です。
代表的な立体自動倉庫は、鉄骨構造などのラック、スタッカクレーンおよび入出庫ステーションで構成され、入出庫を自動で行う保管設備です。
立体自動倉庫は、調達・生産・販売・回収の各分野で、工程間のバッファストレージ、すなわちフローコントローラーとして発達しました。入出庫はコンピュータでコントロールされ、マテハンの自動化ニーズの拡大に対応して、自動ピッキングシステムや出荷荷揃えシステムなどに応用され、用途を拡大しています。
立体自動倉庫を計画する場合の参考として、フロア倉庫に対する「立体自動倉庫の一般的な導入メリット(図表.2-1参照)」および「立体自動倉庫を導入する場合の一般的な留意点(図表.2-2参照)」を例示します。
ピッキングは仕分けとともに物流センターにおける中心的な作業であり、人時生産性と物流品質向上に向けた合理化・効率化を追求しなければなりませんが、効率化の検討に当たっては次の点に注意する必要があります。
まず、ピッキングや仕分けは単独の作業として存在するわけではなく、出荷条件から入荷条件まで関連します。従って、ピッキングや仕分けの合理化・効率化の検討にあたっては、物流センター全体のシステム課題として取り組むべきです。
次に、ピッキングや仕分けにはいろいろな方式があり、どの方式を選択するかによって物流センターの仕組み、生産性、投資額等が大きく変化します。従って、ピッキングや仕分けの合理化・効率化の検討にあたっては、各種方式を具体的に計画し、比較評価して方式を決定すべきです。
以下、【オーダピッキングの方式と特性】【仕分けコンベヤの仕分け方式と特性】をご紹介します。
商品保管の主目的は、需要に対応して即座に供給することです。この需要、つまり出荷指示に基づいて保管場所から商品を取り出す作業がオーダピッキングであり、多くの物流センターで行われる主要なマテハン作業です。
オーダピッキングの生産性を向上し、作業時間を短縮し、作業ミスを低減するために、各種のマテハンシステムが開発・導入されています。実際には最適なシステムを創出しなければなりませんが、そのための基礎知識として代表的な方式と特性をご紹介します。
図表.3-1 デジタルピッキング方式
ピッキングすべきロケーションにピッキングすべき数量を表示して作業を指示する方式で、人をゾーンに配置して作業します。一般に少品種・多頻度に向いています。
図表.3-2 カートピッキング方式
ピッキングすべきロケーションと数量をカートのディスプレイやハンディターミナルに表示して作業を指示する方式で、ピッキングエリアを巡回して作業します。一般に中品種・中頻度に向いています。
図表.3-3 立体自動倉庫方式
立体自動倉庫の保管機能と入出庫機能を活用し、ピッキングすべき容器がピッキングステーションに自動的に供給される方式で、人は定位置で作業できます。一般に多品種・少頻度に向いています。
図表.3-4 自動ピッキング方式
ピッキング作業を自動化する方式ですが、自動化のための制約があることと補充を含めた検討が必要です。一般に商品は小形で形状が変化しないことと、少品種・多頻度に向いています。
上記の4つの方式の特性比較を「図表.4」に示します。
「仕分け」とは、物品を品種別、送り先方面別、顧客別などに分ける作業であり、多くの物流センターで行われる主要なマテハン作業です。
仕分けの生産性を向上し、作業時間を短縮し、作業ミスを低減するために、各種のマテハンシステムが開発・導入されていますが、本項では個々に行き先情報を与えられた物品を所定の位置に集合させる「仕分けコンベヤ」の代表的な方式と特性をご紹介します(図表.5,6参照)。
ダイバータ式
外部に設けた案内板(ダイバータ)を旋回させて搬送経路上にガイド壁を形成し、仕分物をガイドに沿って移動させる方式です。
.構造がシンプルで耐久性に優れています。対応できる荷姿範囲は比較的広いのですが、荷物への衝撃が比較的大きい方式です。
スライドシュー式
搬送面に押出し機構を組込み、仕分物と共に移動しながら押出す方式です。スラットコンベヤのスラットに水平移動のできる押出しシューを装着してあり、これが所定位置でコンベヤ下面に取り付けられたガイドレールに沿ってシュート側にスライドさせて仕分物を押し出します。
荷物の長さに対応してシューの数を割り付けることにより、対応できる荷姿範囲が広く、荷物への衝撃も少ない方式です。
ベルトキャリア式
レールを走行する連続した台車上の小型ベルトコンベヤを、レールと交差する方向に駆動して仕分物を送出す方式です。仕分物を載せたコンベヤ搭載台車が、該当シュートに到着するタイミングに合わせて搭載したコンベヤを駆動して排出します。
この方式はスペースとレイアウトの形状に合わせてライン形およびループ形の選択ができます。形状や底面が不安定な荷物を処理でます。
上記の3つの方式の特性比較を「図表.6」に示します。
アウトソーシングが企業経営合理化の有効な手段として注目される中、物流分野においては3PL化が進展しています。
3PL化の目的は単なる物流コストの削減ではありませんが、荷主は物流の発生源として、3PL業者は物流専業者として協調して取り組むべき重要な課題のひとつです。
以下、【3PLと物流センターの関係】をご紹介します。
3PL(サードパーティ・ロジスティクス)は、多くの企業の経営革新に有効な手段として注目され、国を挙げて推進されてきました。
3PLとは、「荷主に対して物流改革を提案し、包括して物流業務を受託する業務」といわれますが、3PLを依頼する荷主側から考えますと、多くの場合、物流センターの事業形態をどうするか、すなわち施設および運用を外部に委託するかどうかが主要な論点となります。
物流センターの事業形態は一般に4つのパターンが考えられ(図表.7参照)、各パターンを自社の事情に置き換えて基本的な検討を行い、比較評価して3PL化の方針を決定します。
物流センターにかかわる主要な費用は、人件費、スペース費、マテハン設備費ですが、中でも人件費は出荷の小口多頻度化に伴って高まる傾向にあり、しかも物流量の波動に伴って日々の作業量・作業人員が変動します。
このため、物流センターにおいては、省人化の努力とともに契約社員、パート等の非正規社員を活用せざるを得ないので、人時生産性の向上に向けて一般的には次の点に留意します。
①物流量・作業量の予測システムを確立する。
②物流量の波動対応力を高める。具体的には、ボトルネックとなっている作業工程を強化するとともに、複数の作業に対応できる人材を育成する。
③ハンディターミナル等を活用して、作業品質の向上を図るとともに作業指示・作業管理を即時化・効率化する。
④日常的に発生する物流センター運営上の課題は、物流センター全体システムの問題として捉え、各職場が連携して日々改善に取り組む。
物流センターの計画や合理化・改善の検討に当たっては、その前提として物流センターの基本的な特性を理解し明確にすることが重要です。
ここでは、物流センターの意義、役割、位置づけ、基本構造等についてご説明します。
物流センターは、多くの場合、「図表-1」の様にロジスティクスにおける流通システムの中核施設として設置されます。
消費者が店舗で商品を購入すると、販売実績データが小売本部に報告します。小売本部では各店舗の販売実績を集計して卸売業者に発注します。卸売業者は物流センターに各店舗への納品を指示すると同時にメーカーに発注します。物流センターは納品指示された商品を出庫・加工して各店舗に配送・納品します。各メーカーは工場に物流センターへの納品を指示すると同時に生産を指示します。各工場は納品指示された商品を物流センターに納入すると同時に生産を開始します。
この一連の物流活動を通じて、物流センターは需要と供給のバランスを調整する施設として、また、物流を効率化する拠点として下記の機能を果たします。
ロジスティクスと物流センターの関係を「図表-2」に示します。
ロジスティクスの使命は、市場への商品の供給を円滑に行うことを目的とし、「適切な商品を、適切な場所に、適切な時間に、適切な条件で、適切なコストで供給する」ことです。
これに対して、物流センターは「リードタイムの短縮、物流品質の向上、商品管理レベルの向上、トータルコストの削減、物流波動への対応」などによって貢献します。
メーカーから小売店舗への商品供給の流れ(以下「物流チャネル」という)は、商品の特性や取引条件などを前提として、顧客ニーズへの迅速な対応、店舗内のローコストオペレーション、流通在庫の最少化、物流コストの削減などの達成に向けて最適化されます。
この物流チャネルは、流通過程における物流センターの位置付けによって、「図表-3」のように8つのタイプに整理することができます。
実際の流通現場では、多くの場合複数のチャネルタイプが混在します。物流センターの役割・要件・特性は、その位置付けによって大きく変化するため、計画の大前提として明確にする必要があります。
物流センター内部の構造は、取り扱い商品、出荷条件、物量条件、建築条件などによってさまざまですが、多くの場合、DC(Distribution Center)とTC(Transfer Center)の機能を持ち、基本的な概念としては多くの場合「図表-4」に類似します。
物流センターをはじめて計画する場合には、この概念図を基本として、ブレークダウンして行きます。
なお、WMS(Warehouse Management System)とは、倉庫管理システムの略称で、物流センター内の業務を効率化するための情報システムです。基本的には下記の機能で構成されます。
①在庫受け払い処理(入荷処理、保管処理、ロケーション管理、出荷処理、返品処理、棚卸処理など)
②ピッキング・仕分け処理(ピッキング処理、流通加工処理、仕分け処理など)
③作業管理(作業の進捗管理・実績管理、作業員の実績管理、作業生産性分析、作業計画支援など)
お問合せからサービスをご提供するまでの流れをご紹介します。
物流センターの合理化を検討される場合には、多くの場合外部専門家の参画が有効です。
当事務所は、物流センターの構築や次世代物流システムの調査研究に広くかかわっていますので、まずはお役に立てるかどうかをお気軽にお問合せ願います。
「お問合せ」いただければ、無償にて御社にお伺いしてご意向を確認し、対応を検討させていただきます。
御社にて、御社の事業計画・現場の状況等について確認の上、「物流センターの合理化」方針を明確にします。
なお、多くの場合、プロジェクトチームを立ち上げ、当事務所はアドバイザーとして参画させていただくのが良いかと考えます。
当事務所は、物流センターの合理化方針に基づく業務内容と所要経費を提示し、合意の上業務を開始します。
なお、業務内容と所要経費を予め明確にできない場合には、プロジェクト会議ごとに精算させていただくのが良いかと考えます。
いかがでしょうか。
このように、当事務所の「物流センターの合理化支援」サービスなら、実効性の高い物流センターの合理化・改善が実現できます。
「物流センターの合理化支援」サービスに興味をお持ちの方は、ぜひお気軽にお問合せ・ご相談ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。御社の「物流センター」が効率的・効果的に合理化・改善されますよう、また、当事務所がお役に立てますよう願っています。